Search This Blog

プラごみを燃料に 「発電機あっても動かせず」被災者の声聞き開発 - 毎日新聞 - 毎日新聞

「プラスチックゴミ油化装置」の仕組みを説明する保田光徳教諭。プラごみを溶かす釜の蓋にはセンサーがついていて、温度などを検出する=大阪府立堺工科高で、菅沼舞撮影 拡大
「プラスチックゴミ油化装置」の仕組みを説明する保田光徳教諭。プラごみを溶かす釜の蓋にはセンサーがついていて、温度などを検出する=大阪府立堺工科高で、菅沼舞撮影

 発電機はあった。でも、動かす燃料がなかった。東日本大震災の被災者のこんな困り事をきっかけに、プラスチックごみから油を作る試みが、定時制高校で進んでいる。【菅沼舞】

 釜や長短のパイプ、水槽などが組み合わさったワイルドな外観。大阪府立堺工科高定時制(堺市堺区)の保田光徳(みつのり)教諭(62)が制御盤のスイッチを「ON」にすると、エラーが表示された。「あきません!」と保田教諭。釜の蓋(ふた)の締め具合を微調整し、3回目の起動で「プラスチックゴミ油化装置」はようやく動き出した。

プラごみからできた油。いったん気化することで不純物を取り除く=大阪府立堺工科高で、菅沼舞撮影 拡大
プラごみからできた油。いったん気化することで不純物を取り除く=大阪府立堺工科高で、菅沼舞撮影

 装置は定時制の生徒らが府内企業の協力を得て製作した。仕組みは単純。釜の中に砕いたペットボトルキャップを入れて加熱し、気化させてから冷却して液化する。出てくる液体は、石油からできた正真正銘の燃料だ。プラごみであれば種類を問わないが、密度が高いペットボトルキャップはコストパフォーマンスが高く、1キロから約1リットルの油ができるという。

 同高定時制では、地域の伝統的なものづくりを学ぶ「堺学」という授業で、生徒が堺特産の包丁や線香づくりに取り組んでいる。東日本大震災の際に、包丁を寄贈したのがきっかけで被災地支援を始めた。生徒らが興味を引かれたのが「発電機を動かしたくても、軽油もガソリンも手に入らなかった」という被災者の体験談。「ものづくりの学校として何とかしたい」との声が上がり、環境負荷が大きいプラごみの活用と合わせて「スクール油田プロジェクト」が2020年に始動した。

 その第1弾が同年に開発に着手した「プラスチックゴミ油化装置」だ。当初は失敗の連続だった。釜を加熱しても熱がうまく伝わらず、ムラが生じてプラごみがなかなか溶けない。溶解温度は400度が適温だが、温度が上昇し過ぎて安全装置が作動し、停止してしまう。うまく溶けても、発生した気体が途中で漏れてしまい、油がほとんどできない――。

 生徒らは知恵を絞った。釜に小さな鉄製の玉をたくさん入れることで加熱むらをなくし、熱伝導率も高めることができた。温度は、気体冷却に使う水の水圧を上げるとうまくコントロールできるようになった。残る課題は、気体の漏れ防止と工程時間の長さだ。現在は、釜の蓋(ふた)の構造や素材をいろいろ試して漏れを減らす試みを続けている。また、温度上昇がスムーズだと時間が短縮できるため、より熱が伝わりやすい素材や構造の検討を重ねている。

 一連の取り組みは、優れた防災教育を顕彰する2021年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で「しなやかwithコロナ賞」を受賞した。2年の角田優樹さん(17)は「ハード部分はほぼでき上がっているので、今は被災地への設置やそのための資金調達といったソフト面に力を入れている。装置の存在を積極的に広めることで、若い人に防災・被災地支援に関心を持ってもらいたい」と話している。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( プラごみを燃料に 「発電機あっても動かせず」被災者の声聞き開発 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
https://ift.tt/16ETILs


Bagikan Berita Ini

0 Response to "プラごみを燃料に 「発電機あっても動かせず」被災者の声聞き開発 - 毎日新聞 - 毎日新聞"

Post a Comment

Powered by Blogger.