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ニコラの危うい事業モデル、技術進展に依存 - Wall Street Journal

ニコラは自動車のクリーンエネ開発を競う新興企業の一角を占める

Photo: massimo pinca/Reuters

 電動トラック新興企業の米ニコラは今夏、当時の会長が掲げた壮大な構想と個人投資家の熱狂が追い風となり、時価総額で一時フォード・モーターを抜いた。

 その会長は会社を去り、株価が直近のピークから約8割値下がりする中で、ニコラの先行きは事業モデルの強じんさが左右することになりそうだ。同社の事業モデルはこれまで、自動車業界の大物や大手メーカー、著名投資家を引きつけてきた。ただそれは、技術の著しい進展と劇的なコスト削減に依存するモデルだ。

 トレバー・ミルトン氏が2015年に創業したニコラは、自動車業界における「クリーンエネルギー革命」を掲げるスタートアップ勢の一角を占める。ニコラが注力するのが、バッテリー重量が開発の課題となっているトラックだ。ニコラは当初はバッテリーを使用する計画だが、ミルトン氏は非化石燃料エネの代替源として、水素の可能性に注目している。水素はコストの高さがネックとなり、これまで自動車業界で本格的に試されることはなかった。

 ニコラは「水素燃料車のメーカーが燃料も販売すれば、採算が取れる」との大胆な構想を掲げた。水素燃料トラックを事業として成り立たせるためには水素供給ステーションの構築が不可欠で、ニコラは燃料販売によって得た資金が供給網整備の原資になると読む。これが実現すれば、燃料を補給する場所がなければ水素燃料トラックを買う人はいないという「卵が先か鶏が先か」の問題が解決できるという。

 ミルトン前会長は7月、ポッドキャストで「コストを削減する唯一の方法は、トラックだけでなく、トラックが寿命を迎えるまでのすべての水素燃料をまるごと提供することにある」と述べている。「つまり、走行距離1マイルごとに支払う仕組みだ」

 だが、こうしたアプローチは技術とコストの両面で難題に直面する。ニコラが3月に行ったプレゼンテーションでは、現在の価格を大幅に下回る水準で電力を購入することができ、水素燃料供給ステーションが全面稼働にこぎ着けていることが前提となっており、目の前の課題について詳細に踏み込んでいない。注記では「予想される技術の進展により、2025年以降はコスト削減が可能になる見通し」としている。

 ニコラは今月、空売り筋は意図的に同社の生産能力を過小評価していると主張していた。

 ミルトン氏は、会社の技術力を過大評価していたなどとして、ある空売り筋から虚偽疑惑を告発されたことを受けて、辞任に追い込まれた。ミルトン氏の広報担当者はコメントを差し控えた。同氏はこれまで自身に関する疑惑は誤りだと述べている。

 「卵が先か鶏が先か」に対処したニコラの構想は、事業モデルを支えるだけでなく、同社の地位を押し上げる原動力ともなった。これまでゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)、業界の重鎮であるスティーブン・ガースキー氏(ニコラ現会長)、独自動車部品メーカーのロバート・ボッシュ、欧州トラックメーカーのイベコなどから支援を獲得している。

 これらの企業はニコラに関して、それほどの金融リスクを負っていない。例えばGMとニコラの提携合意では、GMがニコラにバッテリーと燃料電池(FC)技術を提供する見返りとして、20億ドル(約2100億円)相当のニコラ株式を取得するという内容で、現金は絡んでいない。

 こうした企業との提携は、上場後のニコラ株急伸の原動力となった。ニコラは6月、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じた「リバース・マージャー」方式で上場を果たした。SPAC経由の上場により、スタートアップ企業は本来行われる徹底した当局の審査を受けることなく、上場することが可能になる。

 ニコラはSPACを通じた上場により、テスラ株の急騰を目の当たりにしてリスク選好姿勢を強めていた個人投資家を引きつけることができた。ミルトン氏は3月、テレビのインタビューで「一刻も早く上場する手段を必要としていた。SPACはまさにそうした目的にぴったりとはまった」と語っている。「これはリテールのストーリーだ」と個人投資家に言及した。

 ニコラの事業戦略の中核を成すのが、「グリーン水素」の生産コストを引き下げるというものだ。グリーン水素では、再生可能エネによって水素燃料を生産する。

 ニコラは今年行ったプレゼンで、グリーン水素の生産コストがキロ当たり2.47ドルに下がる可能性があるとしていた。だが、アナリストは短期間で達成できる見込みは薄いとみている。JPモルガン・チェースのアナリストは6月、グリーン水素の生産・保管・物流コストは現時点であまりに高額としており、水素生産コストの8割は電力が占めると指摘した。

 ニコラのプレゼンでは、再生可能エネをキロワット時当たり3.5セントで購入できると想定していた。米エネルギー情報局(EIA)によると、工業顧客は平均で7セント近く、商業顧客は11セント近く支払っている。

 GLJリサーチのエネルギー担当アナリスト、ゴードン・ジョンソン氏は、ニコラの事業モデルは「再生エネに関して、まだ証明されていない概念」に基づいていると指摘する。ニコラは今月、事業計画は長期的には収益化の達成が可能だとの見方を示している。

 従来の水素は、炭素排出プロセスを通じて石炭や天然ガスから生産されることが多い。これに対しグリーン水素は、水の分子を電気分解して水素原子を取り出すのに再生可能エネを使用することで炭素排出を減らす仕組みとなっている。世界の水素生産に占めるグリーン水素の割合は1%にすぎない。

 だが、生産コストは風力・太陽光発電価格とともに、過去5年に約4割低下している。データ会社IHSマークイットによると、グリーン水素は最低でキロ当たり約4ユーロ(約490円)で生産できる可能性があるとみられている。同社は2030年までには、開発プロジェクトの拡大などを背景に、生産コストが2ユーロを割り込むとの見方を示している。

 IHSマークイットのエネ技術・水素分析部門の責任者、ソウフィエン・ターマラ氏は「ちょうど従来の水素との価格競争力が生まれてくる水準に相当するため、それは究極の目標だと考えられている」と話す。

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September 29, 2020 at 08:45AM
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